髄膜腫(ずいまくしゅ)

良性腫脳瘍の代表的なものです。
偶然発見されることも多く、無症状の場合は経過観察となります。
ただし、蝶形骨縁という頭蓋底部の骨の内側にできたものでは、発見時には無症状でも、ほんのわずか大きくなっただけで、視力や視野の障害を起こすことがあり、手術が遅れると回復困難であるため、早期の手術が良いとされています(脳ドックガイドラインより)。
この種の腫瘍の場合は、主治医から無症状でも早めの治療を勧められます。
また、高齢者の髄膜腫は比較的に悪性の割合が高く、大きくなるスピードが速いとされ、慎重に定期検査を受ける必要があります。
通常の髄膜腫は大きくなるスピードも遅く、大きさも変わらないものが多いとされています。
ただし、直径25ミリ以上、MRIでの特徴的な所見、若い方などでは大きくなりやすい傾向にあります。

下の症例は、最近当院で手術を受けた若い方ですが、6センチを超えるまでは何も症状がなく、急激に言葉が出にくい、右足に力が入りにくいなどの症状で発症しています。
5時間の手術で全部摘出され、9日間で退院されました。

術前のMRI
術前のMRI
術後の6日目のMRI
術後の6日目のMRI

また、髄膜腫は脳の表面にある髄膜から発生するものが殆どですが、太い動脈や静脈、脳神経などに強くこびりついている場合があります。
そうした場合には、無理に摘出することで、血管や神経にダメージが加わり合併症を起こす恐れが出てきます。
術者が手術中に判断し、一部を残して安全な範囲の摘出を行います。
残った部分に関しては、半年から1年ごとに経過観察を行い、腫瘍の成長スピードを考慮して、再手術か放射線治療を追加します。
腫瘍の成長スピードに関しては、摘出した腫瘍の増殖する能力を調べられるので、ある程度の予測がつきます。
重要な血管や神経にこびりついた部分がほんのわずか残っただけでは、すぐに治療が必要なほどに大きくなるものは多くありません。
また、放射線治療を髄膜腫に対して施行すると、悪性化する場合がありますが、ごくまれな副反応であり、あまり心配することはありません。
ただし、再手術が可能だと判断された場合は、摘出術を優先させます。

髄膜腫の中には、まれですが2%ほど悪性の経過をたどるものがあります。
私自身の経験では、いままでに19人の悪性髄膜腫の患者さんを治療しました。
他院で手術をした後にすぐに再発した患者さんや、放射線治療を行っても増大した患者さんが紹介されてくることが多いため、3%ちかい割合です。
退形成性髄膜腫や異形髄膜腫といわれる種類で、残念ながら複数回の手術を行っても命を救うことができなかったケースを経験しています。
こうした悪性度の高い髄膜腫の場合は、最初の手術で徹底的に取り除くことが大切ですが、手術中の病理診断だけでは、悪性度の診断までは難しいのが現状です。
また、前述の放射線治療が原因で悪性になったものは、19人中2人でした。

著者紹介

大橋 元一郎
副院長: 大橋 元一郎
資格
日本脳神経外科学会専門医
日本脳神経外科学会指導医
医学博士
実績
間脳下垂体腫瘍の治療専門
総手術数3000例以上の手術実績
脳血管障害、脳腫瘍、下垂体腫瘍それぞれ600例以上経験
機能的疾患(顔面けいれん、三叉神経痛など)の手術等の豊富な経験
略歴
1991年 弘前大学医学部卒業 三井記念病院 脳神経外科研修
1993年 東京慈恵会医科大学 脳神経外科教室入局
1999年 ハンブルク大学エッペンドルフ病院 下垂体腫瘍研究所
2005年 川崎幸病院 脳神経外科医長
2009年 新東京病院 脳神経外科副部長
2012年 総合南東北病院 脳神経外科科長(新百合ヶ丘総合病院へ出向)
2017年 晃友脳神経外科眼科病院 院長
2021年 野猿峠脳神経外科病院 副院長
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