三叉神経痛とは、顔面に激しい痛み発作をおこす疾患です。
痛みは特徴的で、氷を急に飲み込んだ時のいたみに似ていると表現されることもあります。
数秒間の激痛が顔のひたい(第1枝)、ほほ(第2枝)、あご(第3枝)の1つか、隣り合った2つの部分に起こります。
これは三叉神経の感覚枝が3本にわかれているためで、診断上も重要な所見になります。
また、トリガーポイント(引き金)が顔のどこかにあり、その部分に触れることで痛みが引き起こされることがあります。
痛みを起こす行為としては、洗顔、歯磨き、ひげそり、食事などで、ひどくなると食事が食べられなくなり、やせ細ってしまう方も少なくありません。
また、痛みは仕事や日常生活を脅かし、治療法が見つかる前の時代には、自ら命を絶つ人もいたほどといわれています。
あごやほほの痛みで始まった場合は、歯や歯茎の痛みと思い、歯医者さんを受診して歯の治療をされてしまうこともあります。
この病気も専門家が診察しないと、顔の痛みを起こす別な病気との区別が難しくなります。
治療の第一選択は手術治療です。
この病気も顔面けいれんと同様で、脳幹に入る三叉神経に、小脳を栄養する動脈が圧迫を起こすことが原因です。
この圧迫を解除することで、ほとんどの方が激しい顔の痛みから解放されます。
全身麻酔で通常1~2時間の手術です。
また、全身状態がわるく手術ができない方の場合には薬物治療を行います。
通常はカルバマゼピン(テグレトール)を少量から開始します。
この薬は副作用も多く、使用する際には注意が必要です。
また、徐々に効果が薄れていき、大量に使用しなくてはならなくなることが多いです。
手術の合併症としては聴力障害があげられますが、顔面けいれんの手術に比べ、危険性は高くありません。
三叉神経の近くには必ず太い静脈が並走しており、この静脈の流れが悪くなると、術後の小脳がはれて再手術を要することがあり得ます。
また、痛みは消失しても、不快なしびれが顔に残ることがあります。
この場合のしびれは、ほとんど時間がたつにつれて気にならなくなります。
上図は左の三叉神経痛の場合で、圧迫血管は上方に移動されています。